辨 |
ヨモギ属 Artemisia(蒿 hāo 屬)については、ヨモギ属を見よ。 |
訓 |
漢名は、歴史的には因陳(インチン,yīnchén)・因塵(インチン,yīnchén)とも書かれた。
なお、A.frigida にも茵陳蒿・白蒿の名がある。 |
李時珍『本草綱目』(ca.1596)の釈名に、陳蔵器の説を引いて、「此れ蒿類なりと雖も、冬を経て死なず、更に旧苗に因りて生ず。故に因陳と名づく」と。 |
深江輔仁『本草和名』(ca.918)茵陳蒿に、「和名比岐与毛岐」と。
源順『倭名類聚抄』(ca.934)茵陳蒿に、「和名比岐与毛木」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』11(1806)に、「茵蔯蒿 カハラヨモギ青蒿黄花蒿ニモコノ名アリ、混ズベカラズ ネズミヨモギ コギ遠州 フナバゝキ藝州 ハマヨモギ加州 イヌヨモギ和州、同名アリ」と。 |
説 |
本州・四国・九州・琉球・朝鮮・臺灣・華東・兩湖・兩廣・山東・河南・陝西・河北・遼寧・ロシア沿海地方・モンゴリア・イルクーツク・パキスタンに分布。
埼玉県では絶滅危惧Ⅱ類(VU)。 |
誌 |
中国では、若い苗を乾燥したものを茵蔯(インチン,yīnchén)と呼び、薬用にする。すなわち3-4月に、苗の高さが6-7cmのとき、全草を掘り出して根を除き、干して薬用にする。黄疸など肝臓疾患の特効薬。
ただし、生薬茵蔯蒿の基原植物はカワラヨモギとは限らず、混乱しているが、大多数はヨモギ属の中で、白色乃至灰白色の絨毛をもつ植物の幼い苗を言い、ほかに次のようなものがある、という。
ハマヨモギ A. scoparia(猪毛蒿・濱蒿・臭蒿・東北茵蔯・黄花蒿・絨蒿)
『中国本草図録』Ⅵ/2874・『中国雑草原色図鑑』233
オトコヨモギ A. japonica(牡蒿)
A. sacrorum (鐵杆蒿・萬年蒿・茵蔯蒿・白蓮蒿) 『中国本草図録』Ⅵ/2873
A. frigida (冷蒿・小白蒿・白蒿・剛蒿・茵蔯蒿)『中国雑草原色図鑑』231
Oxytropis myriophylla(狐尾藻棘豆・多葉棘豆・鷄翔草)
『中国本草図録』Ⅴ/2165。マメ科オヤマノエンドウ属。
ハナハッカ(オレガノ) Origanum vulgare(牛至・滇香薷・土香薷・滿坡香・五香草)
ヒキヨモギ S. chinensis(陰行草・金鐘茵陳・土茵陳草・角茵陳・罐兒茶・北劉奇奴)
(以上、『中薬志Ⅲ』pp.161-169)。
日本では、生薬インチンコウは カワラヨモギの頭花である(第十八改正日本薬局方)。 |